[英仏滞在1日でも献血禁止]
2月に国内初の変異型のクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)と診断された男性患者が、1990年に英国、フランス両国に計二十数日間滞在していたことが7日、厚生労働省の調査で分かった。同省は滞在期間が短いことを重視、80-96年の間に両国に1日以上滞在した人の献血を禁止することを決めた。
両国は変異型CJDの発生国で、同日開いた血液事業部会運営委員会で対応を協議し「世界的に最も厳しい措置」(血液対策課)を決めた。日赤によると、献血者が年間数10万人減る恐れがあり、深刻な影響が予想される。
現在の献血制限は、80年以降に英国滞在1カ月以上、フランス滞在6カ月以上の人が対象。新たな制限は一定の周知期間の後に行う。
感染ルートを調べていた厚生科学審議会CJD等委員会が同日公表した調査結果によると、50代のこの男性患者は90年前半に、変異型CJDの感染源とされる牛海綿状脳症(BSE)の発生国の英国に24日間、フランスに3日間滞在していたことがパスポートで確認された。英国滞在中、肉汁を使った「グレービーソース」やハンバーガーなど、変異型CJDの発症原因と指摘されている食品を食べたことも家族の聞き取りで分かった。輸血、手術歴はなく、同委員会はBSEが猛威を振るっていた英国で感染した可能性が有力、と結論付けた。2月の診断時に英国滞在時期を「89年」と発表したが、90年と修正した。
英国で食用牛から脳などの特定危険部位除去が始まった89年11月より後だが「96年に対策が完了するまで危険性はあった」としている。
血液対策課によると、欧米の献血制限は、米国とカナダが「英国滞在歴3カ月以上」としているのが最も厳しい。
[変異型クロイツフェルト・ヤコブ病]
牛海綿状脳症(BSE)の牛の肉を食べて感染
すると考えられている人間の病気。BSEが発生した英国で1996年に初めて確認された。脳に異常プリオン(タンパク質)が蓄積するのが原因とされ、脳にスポンジ状の穴があく致死的な症状がある。ヤコブ病には変異型(vCJD)のほかに原因不明の「孤発性」、遺伝子異常で起きる「家族性」、脳の硬膜移植などによる「医原性」があり、孤発性は100万人に1人の割合で発生する。変異型かどうかの確定診断は、死後に脳の病理検査をしないと難しいとされる。
今回、男性患者の英国滞在歴が短かったため、厚生科学審議会クロイツフェルト・ヤコブ病等委員会は、発症原因となるプリオンタンパク質の最少量を検討。牛の感染実験から、人でも少量で発症する可能性があるとの見方を示した。
欧州以外で発症した米国とカナダの症例は1979―92年、87―90年と英国に長期滞在。男性は24日程度と短く、プリオンの摂取が少なくても発症するのかが焦点の一つとなった。
英国の研究機関の実験では、牛海綿状脳症(BSE)に感染した牛の脳組織0.1グラムを、感染していない牛に経口投与すると15頭中3頭が発症。0.01グラムと0.001グラムではそれぞれ15頭中1頭が発症した。
同委はこれらから「ごく少量で発症する牛がおり、結果を人にそのまま適用するには無理があるとしても、人でも、少量のBSE牛を食べた時に発症し得ないとはいえない」とした。
ただ、「(発症例が)多いか少ないかは言えない」(同委員長・北本哲之(きたもと・てつゆき)東北大教授)とし、発症メカニズム解明のため、研究の推進を求めた。
[「献血減なら制限再検討」 変異型ヤコブで尾辻厚労相]
尾辻秀久厚生労働相は8日の閣議後の記者会見で、国内初の変異型クロイツフェルト・ヤコブ病患者の発生を受けた英国、フランス滞在者の献血制限について「国民の安全を守るため、一番厳しい措置を取らなければならない」とする一方「実施状況を調査し、あらためて次のことを考える」と述べ、献血者が大幅に減り血液が不足する場合は再検討する考えも示した。
全国の医療機関に対し、輸血用血液の使い過ぎがないよう適正使用を要請することも「今後考える」とした。
患者の男性が英国に244日間、フランスに3日間滞在していたことが確認され、同省血液事業部会運営委員会が7日、1980―96年に英国、フランスに1日以上滞在した人の献血を禁止する方針を決めた。献血者への問診方法や安全性の評価など技術面の検討は今後、同部会安全技術調査会で行う。
[共同通信]
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